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おっさん、映画を見る

広告業界で働くITエンジニアなおっさんが、映画について語っていくブログ(ネタバレもあり)

前提知識を求められる?混ぜるな危険を地で行く映画 『高慢と偏見とゾンビ』レビュー

レビュー

こんにちは、おっさんです。

これを快作とみるべきか駄作とみるべきかは結構人によってわかれると思いますが、怪作なのは間違いないでしょう。 『高慢と偏見とゾンビ』を見てきました。さっそくレビューしていきましょう。

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原点『高慢と偏見』について

本作の原点である『高慢と偏見』(後述しますが原作ではないです。原作はそのままズバリ『高慢と偏見とゾンビ』という小説となります)についてまずはご説明しましょう。

この作品は、イギリスの女流作家、ジェーン・オースティンによって1813年に出版された長編小説です。ジェーンは牧師の家で生まれ、比較的裕福な家庭環境で育ち、短期間ですがオックスフォードで学んだといわれています。また、姉カサンドラと姉妹仲も良く、彼女たちの間に交わされた多くの書簡が現存しています。

この作品で描かれる田舎のジェントリ社会や資産家たちの生活、姉妹仲などは作者自らの経験が存分に反映されているといっていいでしょう。

ヒロインは田舎の中流階級の長女であるエリザベス。彼女は結婚だけが女性の人生の歩み方だった時代に例外的に自立心の強い女性として描かれています。

そんな彼女の相手が爵位こそないけれど古くからの名家の出身であり、伯爵家と姻戚関係と年収1万ポンドの財産を持つミスター・ダーシー 。資産家です。

ダーシーの友人であるビングリーが彼とともに、エリザベス達ベネット家の住む街に別荘を購入し移住することで二人は出合います。パーティーの席でピングリーとベネット家の長女ジェインが互いに一目ぼれのような形でひかれあい始める一方で、エリザベスはダーシーが自分の事を軽んじる発言をするのを聞いてしまい反発。 実はこの時点でダーシーはエリザベスの瞳に惹かれ始めていたのですがが、プライドの高い彼は格下の家のエリザベスと打ち解けられないでいました。

同じころ青年士官ウィカムが街に駐留することになり、エリザベスも彼に少しだけ惹かれるのですが、その彼の口から彼が相続するはずだった分の遺産がダーシーに奪われたと教えられ、エリザベスはダーシーへの反感をますます強めることに。

さらにはビングリーも唐突にロンドンに帰ってしまうのですが、のちにこれもダーシーが差配したこととエリザベスは知ってしまいます。

そんな中でダーシーがとうとうエリザベスに求婚。しかし彼を気に入っていないエリザベスは拒絶。翌日、ダーシーからエリザベスに手紙が届きます。その中には彼からの真摯な釈明の言葉がつづられていました。ビングリーの件はジェーンの気持ちを量りかねたため、周りの粗野なふるまいから財産目当てで近づいたと誤解していたこと、ウィカムの件も彼の悪行の故であり、決してダーシーがウィカムを冷遇しようとしてしたことではないということ。

彼の“高慢さ”に反発を覚える一方で、そんなエリザベスにも彼に“偏見”をもつ悪い部分があったのだと気づくのです。

で、なんやかんやあって、二人は真実の愛に気付きましたとさ。

……すいません、原点未読なんです。

ちなみにこの作品は何度も映像化しているので興味があればこの辺から探して見てみるのもいいと思います。

多くの派生・翻案作品も

高慢と偏見』自身がイギリス近代文学の最高傑作のひとつなどと評されているためか、翻案なども多く(『高慢と偏見、そして殺人』なんてミステリも)、本作『高慢と偏見とゾンビ』もその一つ、というわけです。

また有名な話としては『ブリジット・ジョーンズの日記』は作者が1995年版のドラマとして本作をみていたことにインスピレーションをえた作品だといわれています。 ブリジットが恋をするバツイチの弁護士の名前がダーシー。彼を演じたのはコリン・ファースですが、1995年版ドラマでミスター・ダーシーを演じていた、というわけです。バタバタしながら価値観を摺り寄せていくところとかもエッセンスをとっているかもしれませんね。

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原作『高慢と偏見とゾンビ』について

で、問題のこれです。

この中身はまさしく映画本作にて語られたことそのままなので、後述のストーリーの項に譲るとして、ここでは作者について触れてみます。

この作品の著者はセス・グレアム=スミス。アメリカ合衆国の小説家、脚本家、テレビプロデューサーです。脚本家としてティム・バートン作品に参加しているほか、テレビのコメディドラマ脚本も執筆しています。

既存の文学作品や歴史上の出来事にゾンビやヴァンパイアなどホラーな世界観を加えたパロディ小説として本作のほかに『ヴァンパイアハンター・リンカーン』を執筆。

リンカーンがヴァンパイアを狩る、というとあの作品を思い出しませんか?そう、『リンカーン/秘密の書』の原作なんです、これ。

またお前かの仕業か!

スタッフ・キャストについて

本作の監督はバー・スティアーズ。知らない名前だなぁと思ったらタランティーノの『パルプフィクション』で俳優として出演していたんですね。その後自身の脚本で『17歳の地図』でデビューし、『セブンティーン・アゲイン』や『きみがくれた未来』を監督、とキャリア紹介されているんですが、ごめんなさい、一本も見ていません。

主人公にしてヒロインのエリザベス・ベネット役はリリー・ジェームズ。『タイタンの逆襲』で長編映画デビューするとしばらくはテレビシリーズで活動したのち『シンデレラ』でそのままシンデレラガールとして一気にスターダムにのし上がりました。 今作で追加された情報としては、“とてもいいものをお持ち”だということかな。

ミスター・ダーシーを演じるのはサム・ライリー。もともとバンドマンだったのが俳優に転向したというキャリアを持っています。そのせいかデビュー作は夭折のミュージシャンに扮した『コントロール』。『ブライトン・ロック』や『マレフィセント』で評価されていますね。

ウィカム役にジャック・ヒューストン。ジョン・ヒューストン監督を祖父にもち、叔母には女優アンジェリカ・ヒューストンがいるという演劇のサラブレッド。『アメリカン・ハッスル』や『キル・ユア・ダーリン』などに出演していますが、まだまだこれからって感じですかねぇ。

長女ジェインはベラ・ヒースコートジョニー・デップと共演した『ダーク・シャドゥ』とかヒュー・グラントとの共演『Re:LIFE リライフ』などが有名でしょうか。

本作の狂言回しというかお笑い担当コリンズ牧師はマット・スミス。史上最年少でドクター・フーを演じたことで一躍有名になりました。『ロスト・リバー』や『ターミネーター:新起動/ジェニシス』などの出演作がありますが、それ以上に本作をきっかけにエリザベス役のリリー・ジェームズと同棲スタートするとか報じられて嘘やろお前ってなりました。

高慢と偏見とゾンビ』のストーリー

18世紀末、イギリス。謎のウイルスが蔓延し、感染した者はゾンビとなって人々を襲っていた。片田舎で暮らすベネット家の5人姉妹は得意のカンフーでゾンビと戦う毎日だが、姉妹の母親は娘たちを早くお金持ちと結婚させなければと焦っていた。  そんな時、近所に資産家のビングリーが引っ越してきて、友人の大富豪で高潔な騎士ダーシーも出入りするようになる。折しも舞踏会が開かれ、ビングリーとベネット家の長女ジェインはひと目で恋におちる。一方、次女のエリザベスはダーシーの高慢な態度に腹を立てながら、彼のことが気になって仕方ない。ダーシーも戦う姿が勇ましい彼女に惹かれていくが、身分の違いを乗り越えることができないでいた。  ところが突然、ビングリーがジェインを置いてロンドンへ帰ってしまう。ダーシーが二人を引き裂いたと聞いたエリザベスは激怒し、ダーシーが一世一代の決意で臨んだプロポーズを拒絶してしまう。そんな中、遂に人類とゾンビの最終戦争が始まり、エリザベスとダーシーは共に戦うことに。果たして、すれ違う恋と、人類滅亡の行方は─?

映画『高慢と偏見とゾンビ』公式サイト - 大ヒット上映中

映画のメインプロットとしてはおおむね原点に忠実です。なので、上にかいた原点のストーリーを見ていただければいいかなとw。

というか、PV見れば大体わかる。


「高慢と偏見とゾンビ」予告編

とはいえ一応。

冒頭ですが、ミスター・ダーシーがとある邸宅を訪れるところから。外にはゾンビが徘徊する世界観。荘園的な地主生活を送る地方のジェントリたちは家の中で引きこもりカードに興じるといった生活を送っているようでした。 そこを訪れたダーシーの目的。それはゾンビをあぶり出し狩ること。彼は国軍大佐としてゾンビハンターでもあったのです。 「死肉バエ」というゾンビを見分けることのできるハエを使って首尾よく牧師になりすましていたゾンビの処理に成功するダーシー。しかし館の中には他にもゾンビが侵入してしまっており……

はい、いきなりぶっ飛んでますね。冒頭のセリフからして「ゾンビが人間の脳を食べて狂暴化するのはみんなが知っていることだが」みたいな感じで、この時点で「あ、この映画相当おかしい」と気づかせてくれます。ちなみにゾンビ映画にありがちなスプラッタなグロ要素は控えめ、というよりほとんど描写なし。アクションと音で驚かされることはあっても、目を背けるような映像というのは全編通してでてきませんのでそういうのが苦手な方もご安心を。

さて、時は移り主人公エリザベスを含む5人姉妹とベネット家の話。元になった作品では姉妹揃って繕い物をしているという、実に18世紀イギリスを象徴するようなシーンなのですが、ここで彼女たちが手入れしているのが短銃や刀剣の類。軍だけでなく民間も自衛のために武装していることが明確になります。

ちなみにここで説明される世界観では、ある程度以上の家庭では武装するのが一般的なこと、そうした武術を身につけるため富裕層は日本に、そうでないものたちは中国に行くことが説明されています。 ベネット家はジェントリですが中流階級の上、姉妹だけで5人という状況ですから全員が中国でカンフー(少林寺拳法)を身につけているとのこと。後述の別記事にこの時代のイギリスのオリエント志向について簡単に説明してありますので御覧ください。

で、ビングリー氏の歓迎を兼ねてパーティ。はい、2組のカップルが出会うアレですね。ここでの出会い、そしてそれぞれが抱いた感想も原点に忠実。

ただし大きく原点と違うことが。 パーティをやるとね、ゾンビが来るんですよ……

本作の見どころ、5人姉妹そろっての共闘アクションはうまい具合にスローが用いられていてかなりスタイリッシュ。

ちなみに、パーティ前の着替えシーンは結構見もの。胸元を盛り上げるコルセットにガーターですので、この時代の標準的な女性下着のスタイルなのですが、これに加えて革のホルスターを身につけ、短刀を差し込んでいくんですから、セクシー&バイオレンス。

http://gaga.ne.jp/zombies/images/intro/lady.jpg

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シュールな光景ではありますが、姉妹全員美人でスタイルもいいので眼福この上ないですね。ここでの装備が功を奏してゾンビの撃退に成功しました。

その後ジェインはビングリー邸に招かれるのですが、途中でゾンビと遭遇してしまい、邸宅で発熱、寝込むことに。あわててエリザベスが看病に駆け付けるわけですが、ゾンビ+ケガとなれば感染が疑われるわけで、ダーシーが例の「死肉バエ」でジェインを調査……しようとするも、すべて空中でエリザベスが捕まえてしまい、さらには握りつぶしてしまって何も判明せず。コミカルなシーンに笑いが起きていました。

この晩でエリートジェントリたちと話し込んだエリザベスは、やはりダーシーやビングリーの姉妹たちといったエリートたちの高慢さに腹を立ててしまい、他の家族が見舞いにきたことを口実に帰宅することに。この途上でもゾンビに出くわしますが、病体のジェインを含めて姉妹たちが無言で拳銃を取り出し警戒するという。いやー、メンタルセットができてるなぁ。

この後もおおむね原点通り。姉妹のいとこにあたるコリンズがやってきて最初はジェイン、次にエリザベスと目移りしたすえに、結局は姉妹の友人であるシャーロットと結婚。

一方エリザベスはウィカムと親密になって、相続の件からますますダーシーに反発する、という次第。もう視聴者としては怪しくて仕方ないんですけどね、ウィカム。デビット伊東に似てるし。

この間に、ジェインの快復にあわせて今度はビングリー氏主宰のパーティへ。で、お約束をわかっていますね。パーティするとゾンビが来る。テストに出る法則ですよ。

ここでエリザベスとダーシーがはからずも共闘。お互いが嫌いあっていることを知っているのでやりづらそうではありますが、それぞれがそれぞれの強さを認め合うような雰囲気。ここでの戦闘であるゾンビが言っていた(はい、本作のゾンビはしゃべります。ある程度高度なことも考えたりもします)「新しい友に招き入れてもらった」というのが伏線ですね。普通の人間を装っている誰かのうちにゾンビ、あるいは内通者がいる、ということでしょう。

その後エリザベスはウィカムに連れられ、ロンドンのイン・ビトゥイーン内部にある聖ラザロ教会で対話のできるゾンビたちと出会います。 聖ラザロ。『ラザロ・エフェクト』という映画ではタイトルに抜擢されましたが、イエスによって死からよみがえったという逸話をもつ人物です。いわば不死者の守護聖人というわけで、うさんくささ満点。

かと思ったらシャーロットとコリンズの結婚を報告にレディ・キャサリン邸にご挨拶に行ったり。コリンズはレディ・キャサリン食客で、ダーシーは彼女の甥にあたるそうで、どう考えても面識がありそうなのですが、ビングリー氏主宰のパーティでいかにも初対面です、って雰囲気だったんだよなぁ。この辺から脚本のあいまいさが目立ち始めます。

そのキャサリン邸でダーシーがとうとう思いを打ち明けエリザベスに求婚。しかし返事はノー。そらそうなるな。 この二人、拳を交わさないと意思が伝えられない人種のようで、なぜか二人がバトルをする超展開。なんだこれ。この前のシーンでも姉妹たちが意見を交わすときには一緒に拳を交えていましたが、どうやら当時のイングランドには戦闘民族がすんでいたようです。

このシーンでの見どころですが、バトル中にはだけるエリザベスの服。当時の服装なのでブラではなくコルセットですが、本当にエリザベスは「いいモノ」を持っています。

ここからも原点同様、手紙でエリザベスの誤解をとくダーシー。心残りを断ち切ったと、イン・ビトゥイーンの防衛最前線に向かってしまいます。

二人がやっとわだかまりを解いたのと思ったら今度はウィカムが末の妹リディをさらうという事件勃発。原点ではウィカムの転居先に行っただけですが、ここはゾンビがうろつく危険な土地。なんとさらわれた先は聖ラザロ教会でした。

妹を取り返すためにイン・ビトゥイーンに向かうエリザベスとジェイン。そこは彼女たちの想い人であるダーシーとビングリーが部隊を率いて戦っている土地で、無事に合流を果たすことができました。

その後ダーシーが聖ラザロ教会に向かい気転を利かせてリディを助けることに成功しますが、立ちはだかったのはウィカム。彼はすでにゾンビになっていたのでした……ってやっぱりな。

ぎりぎりのところで彼を追いかけていたエリザベスが間に合い、二人はイン・ビトゥイーンからの生還に成功するのでした。

ラスト、2人×2組が幸せな結婚式を迎える、というところでエンディングなのですが、テストに出る法則覚えていますね。

そう、パーティ始めるとゾンビが来るんだよーッ!?

まあ全体的に説明不足だし、当時のイギリス文化や環境にくわしくないとしっくりこないところも多いんですけどね。 そのへんはこちらの記事にまとめましたのであわせてご覧いただければより楽しめるかと思います。

ossan-movie.hatenablog.com

アラが目立つけどスタイリッシュ・アクションとしては及第点

まあですね、細かいあらは目立ちます。 前提として当時の風俗や習慣などに関する知識がないと、なぜそんなことになっているのか理解できないことも多いですし。

原点のストーリーを忠実すぎるほどに守っているので、それを見たことあるかどうかで面白さが変わってきそうなのもマイナスかもしれない。

が、それ以上にヴィクトリア朝期の服装でダンス、からの唐突なゾンビ戦でのアクションというギャップが非常に面白く、スタイリッシュ・アクション・ムービーとしては結構楽しめた作品でした。

さいごに

あまりに当時のロンドンが好きすぎて別記事切り出すという暴挙に至った今回。自分にびっくりしました。

多分、前提知識の多寡で多少本作の印象が変わってくると思うのですが、それはつまり、作品中での説明不足ということ。正直にいってそうしたアラが目立つ作品であることは確かです。

ただ、パーティードレスでゾンビをどんどん切り捨てていくところとか、実にシュールでかつスタイリッシュ。ストーリーが比較的まじめ志向なので、そうしたところをぼーっとみると楽しい。

そんな映画だったと思います。