読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

おっさん、映画を見る

広告業界で働くITエンジニアなおっさんが、映画について語っていくブログ(ネタバレもあり)

『コンカッション』試写会に行ってきたよ

イベントレポート

こんにちは、おっさんです。

昨日ですが、10月29日公開の新作映画『コンカッション』の試写会に行ってきたのでレポートしていこうと思います。途中ストーリーについても触れますが、公開前なのでネタバレは基本的にしません。が、実話を元にした映画なので、事例とかを紹介したら若干ネタバレになってしまうのかも。なので、そういう方はストーリーの項目を飛ばして見ていただければいいかな、と。

http://www.kinenote.com/concussion/img/index/img03-sp.jpg

http://www.kinenote.com/concussion/img/index/img03-sp.jpg

"コンカッション"とは

そもそも"コンカッション"とは、英語で「脳震盪」を示す言葉。

www.nikkei.com

hawkswagon.blogspot.jp

techon.nikkeibp.co.jp

まずはこれらのニュースを御覧ください。

華々しいアメリカンフットボールですが、近年、その激しい肉体衝突に起因する"脳震盪"とその積み重ねによる慢性外傷性脳症(まんせいがいしょうせいのうしょう、Chronic traumatic encephalopathy; CTE)という脳障害が問題になっています。

これはかねてより「パンチドランカー」と呼ばれていた障害と同一のものです。 最近の研究で、こうした障害は格闘技だけでなく、強い肉体接触を伴うアメリカンフットボールやバスケットボール、アイスホッケー、野球等のスポーツでも発生することがわかってきました。

この障害の恐ろしいところは、死後の脳の病理学的検査でしか診断することができないということ。どれだけ慎重にメディカルチェックをしようと見つからず、見つかったときにはすでに手遅れである、ということなのです。つまりは頭部に衝撃を受けるような事態を減らすか、衝撃を軽減するような抜本的な対策以外に防ぎようがなく、それは現在人気になっているスポーツ自体のルールを変えないとならないことを意味します。

NFL(米国フットボールリーグ)ではこうした障害について把握しながらも隠蔽してきたのではないか、という疑惑に全米が揺れているのが現状なのです。

『コンカッション』のストーリー

ベネット・オマル(ウィル・スミス)は、ナイジェリアから夢と希望を抱いてアメリカに渡ってきた優秀な医師。脳検査に精通し、臨床病理学・解剖病理学など法医学の免許も持つ、“死の医学”のプロフェッショナルだ。正義感が強く何よりも真実を重んじる彼は、ペンシルベニア州ピッツバーグで検死官として働くかたわらボランティアで法廷に立ち、豊富な経験と科学的知見を生かして容疑者の弁護も務めていた。私生活では教会の牧師に頼まれ、ケニアから来たばかりのプレマ(ググ・バサ=ロー)という女性に部屋を提供。同じアフリカ移民同士、ぎごちないながらも共同生活を送ることに──。

映画『コンカッション』公式サイト|10/29(土)より全国順次公開

ウィル・スミス演じるナイジェリア出身の医師ベネット・オマルは、検死官として働いているときにたまたま担当することになった元NFLのスター選手マイク・ウェブスターの死、そして死の遠因となった神経性と思われる障害に疑念を抱きます。 彼は通常の検死の他にも自費でマイクの脳を詳細に病理検査することに。そこで見つけたある「真実」。彼はアメリカ社会全体を敵に回すような中で「真実」を伝えるために声を上げ続けるのです──。

視聴の感想、そして『ハドソン川の奇跡』との対比

正直、暗く、重く、そして単調なストーリーラインです。それは「真実」と「人の死」を扱っている重みとでも言うのでしょうか。スカッとするエンタメ映画を求めている人には徹底的にあわない、というかあわせる気がない、そんな映画。

正義感と倫理観を持ったプロフェッショナルのストーリーということで、『ハドソン川の奇跡』ともつながるものがあります。ですがあちらで出て来る"相手"であるNTSBは決してサリーの敵ではなく、立場は違えども事故の真相を明確にする、そして次の事故を防ぐという共通の目標をもつ相手でした。

ossan-movie.hatenablog.com

今回、Dr.オマルが相手取るのはNFLという超巨大興行組織であり、それを人気という形で下支えするアメリカ社会です。したがってサリーより孤独で、僅かな味方のみの厳しい戦いを強いられることになります。

「巨大な組織を相手に、華々しさの裏にある「生命」の問題をウィル・スミスがえぐりだす、そんな映画だった」と試写会を見た自分は感じました。

NFLについて

Dr.オマルの"敵"であるNFLについても簡単にご説明します。

NFL、ナショナル・フットボール・リーグ(英語: National Football League, NFL)はアメリカでも最大のスポーツリーグであり、この興行団体です。

アメリカには4大メジャースポーツがあります。

がそれです。

NFLはこれら巨大スポーツリーグの中で人気、興行規模ともに最上位とされています。その人気はレギュラーシーズンの1試合平均観客動員数は6万7000人を超えるほど。PPVで視聴している人も多く、劇中では週末だけで"2000万人"が楽しみにしている人気だと語られています。2014年シーズンの年間収益は120億ドルと他国のメジャースポーツとは一線を画すほど突き抜けた収益力をもち、それはすなわち、リーグに不利なニュースに対してかけることの出来る圧力の大きさを示しています。

障害を防止する目的でフットボールのルールを変えるような行為は、こうした社会的人気、さらにはこのスポーツでスターを目指す若者たちの夢を奪う行為であり、また関連する産業に従事するその何十倍、何百倍の人々の雇用を奪いかねない行為だ、というわけです。

NFLの弁護のために書いておく必要がありますが、彼らは別に選手の人生や生命を軽視しているというわけではありません。十分な報酬や医療体制、教育等のバックアップ、寄付などの社会的行為、もちろん雇用の確保など、NFLが果たしている役割は大きく、逆に大きすぎるが故に自分たちに不利な情報は"見なかった、なかったこと"にするという判断をせざるを得ないのです。

スタッフ・キャストについて

本作の監督はピーター・ランデズマン。2014年に公開された『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』で映画監督してデューを飾り本作が2作品目のメガホンということになります。前作、そして本作ともに、アメリカを震撼かせた社会的事件の裏側を、人物の心情にクローズアップする形で描いていく作風を確立したといっていいでしょう。

主人公Dr.オマルはウィル・スミス。ヒップホップ・グループのシンガーとしてデビューし、『メン・イン・ブラック』『インデペンデンス・デイ』『アイ,ロボット』などに出演する"ドル箱"俳優です。出てくる映画、とにかく当たるんだよなぁ。かつてはコメディ路線の演技だったのですが、『幸せのちから』あたりからでしょうか、物静かでインテリジェントな演技をするようになった印象。直近では『スーサイド・スクワッド』にも出演していましたね。

ossan-movie.hatenablog.com

制作はリドリー・スコット。俳優としてデビューした彼ですが、監督やプロデューサーとしての活躍が目立ちます。とくに監督としては『エイリアン』『ブレードランナー』『グラディエーター』など、映画史に残る傑作を何本も撮っています。今年の初春に公開された『オデッセイ』も彼のメガホンによるものです。SFに強い印象のある監督ですが、本作ではヒューマンドラマでも素晴らしい作品を作れることを証明しました。

イベントレポート

さて、本作の上映は文京シビックセンターの小ホールで行われました。 文京シビックセンターは文京区役所が2000年に立て直しになったときに立てたタワービルで、この中には区役所としての住民サービス用のスペースの他に、大小の多目的ホールや練習室、会議室などが入っています。

後楽園や小石川のあたりを車で走ったことがあれば目に入る、ちょっと変わったデザインのビル。なんか発進しそうなあれです。 地下鉄後楽園駅春日駅から直通の通路が用意されており、雨の日でも濡れずに出入りできる、というのが魅力ですね。

この小ホール、席数は375席とのことですが、後方の一部を上映機材設置用に割り当てていたのと、客入りが8割程度だったので試写参加者は250人前後、といったところでしょうか。 このホールですが、ちょっと椅子が硬い&音響が微妙で、映画視聴環境としてはあまり良い環境ではありませんでした。

特に登壇者もなく、場内アナウンスだけがあるのみで映画は始まり、そして重苦しい雰囲気のまま終了します。とにかくテーマが重く、退場する際にもほとんど喋る人がいなかったことが印象的でした。

区役所という場所柄招待された観客に地元の方がいらっしゃっていたのでしょうか、ちょっと年齢層が高かった印象があります。彼らがこの映画をどう思ったのか、非常に興味深いです。

さいごに

公開前ということで出来る限りストーリーの核心には触れず、ちょっと書くのがむずかしい記事になってしまいました。 文中でも書きましたが、『ハドソン川の奇跡』とまた違ったヒューマン・ドラマであり、とても単調で重く、そして考えさせられる映画で、好き嫌いがはっきりと分かれそう。

そうした人間の真実を見たい方にはぜひとも見て、そして考えていただきたい作品です。

広告を非表示にする