"町おこしラーメン"の違和感と『シン・ゴジラ』 製品の魅力と集客力というものについて考えてみる。
こんにちは、おっさんです。
最近ちょっと忙しくて劇場に足を運べていません。なので映画レビューはしばらくお待ちください。 次の週末もちょっと南の海にでかけちゃうんで、う~ん、今週の平日どこかで見に行けるといいなぁ。
というわけで、本日はラーメンの話なのです。
「いや、ここ映画ブログじゃねえのか、映画の話しろよ」といわれるかもしれないんですが、もちろん、映画を絡めての考えを書いていきます。ラーメンはスープとの絡みが大事なんですけどね。
きっかけはとあるテレビ番組
先ほど遅い夕食をとりながらテレビを見ていたんですけど、すごく違和感のある内容を放送していたんですよね。
この番組で。
まあぶっちゃけ、町おこしのために新しいラーメンを開発しよう、という内容なんですが「これって本当にその目的を達成できるアウトプットなの?」と思ってしまったわけです。
僕、結構というか、時折本屋に並ぶムック本を買っては全店制覇するくらいにはラーメン好きなわけですけど、その僕からみて、これ食べるために出かけるか?と疑問に思うようなものだったのですね。
番組内の企画について
そもそもどういう企画だったのかというと、町おこし、つまり、今回の舞台である前橋の商店街を活性化させるために新しいラーメンを開発しよう、と。そのために浅草の有名洋食店のシェフを現地に向かわせて、ご当地の雰囲気を持ったラーメンができたらいいね、とそういう企画なのです。
見ていないんで知らなかったんですが、どうやら以前、足利でも同様な企画をやったことがあるようでして、この時はご当地名物の玉ねぎをエスプーマで泡状にしてラーメンの上にふたをするように盛り付ける、なかなかぶっ飛んだものを作ったようです。一応、放送後もまだ提供しているお店では注文が多いらしく、人気メニュー、と紹介されていましたが……。
今回作ったラーメンは地元の野菜や肉をゴロゴロっとつかったポトフ風のスープに、「カダイフ」というトルコの麵風の食材と「ポーチドエッグ」で飾り付けた、いかにも洋食シェフが作りました、という代物でした。ちなみに「前橋ポトフラーメン」というそのままのネーミング。
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これ、食べるために前橋まで出かけますか?という話
でね。
これ絶対美味しいとは思うんですよ。
食事がすんだら僕はさっさとテレビ消しちゃったので、完成品のビジュアルまではみたんですが、地元の人たちがどういうリアクションをしていたのか、パーソナリティはどういう反応だったのか、ということまでは分かりません。
ですが、一流の洋食シェフがちゃんとしたポトフを作ったうえで、そのポトフにあう麺を選び、さらに見た目に気を付けてトッピングをつくったわけで、おいしくないわけないと思います。
ただ気になったのは、「これ、食べるために前橋まで出かけますか?」ということなのです。
普段こない人を集めることができるのが本当の集客力
今回のラーメン作りは、地元名産品をつかったラーメンを作ること、ではなく、それを新しい名物にしよう、つまりは町おこしの材料にしよう、ということだったはずなのです。
ということは、普段から前橋を生活圏にしている人が今回の舞台になったお店によるだけでは、ただそのお店が儲かるというだけです。それはそれで地元の経済の活性化という意味を持つのかもしれませんが、"町おこしのできる名物"にするためには、例えば東京のラーメンフリークが食べに行くようになるとか、他の地域の人にも「あそこにはこういうラーメンがあるぞ」と知ってもらえている、という状態にならないといけないと思うのです。
ところが、出来上がったラーメンは目新しさはあるものの、ラーメンとしての完成度が高いようには見えませんでした。スープの煮込み時間もトッピングの出来も含めて、これのためにラーメン好きがでかけることは少ないだろうなぁ、と思ってしまったのです。少なくとも僕はいかないな、これ、と。
僕はかつて、たった一杯のラーメンを食べるためだけに東北新幹線に乗って仙台まで行ったことがあるのですけど、今回のラーメンにはそういう魅力がない、ただ目新しいだけで、ラーメン好きを集客する力はないだろう、と見えたのですね。まあラーメンブロガーは写真取りに行くかもしれませんけど、ラーメンフリークには好かれないだろうなぁ、って感じですかね。
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『シン・ゴジラ』がなぜ成功したといわれるのか
さて、今年の夏映画の話です。今でこそ『君の名は。』が化け物じみた数字を挙げていますが、その上映前は『シン・ゴジラ』がとんでもない成功なのではないか、と言われていました。
『シン・ゴジラ』はなぜ成功といわれたのか。それは単純に旧来の怪獣映画を見に行く層以外の、ごく普通であまり映画を見ない観客層が見に行くようになって、しかも彼らから見て新しい、面白い、という作品だったからに他なりません。あの映画をほめている人のうち、結構な割合 で「ゴジラシリーズは初めて見たんだけど予想以上に面白かった」という人がいます。
これが本当の意味での集客力だと思うのです。
今回のラーメンはおそらく普段から前橋に来ている人を集客することができるでしょう。ですが、それは旧来のVSゴジラシリーズの延長のような映画で結局怪獣映画ファンしか来ない新作映画、と状態と同じことなのです。そこそこヒットはするかもしれないけど、限定的。
本来町おこしに必要なのはそうではなく、(ちょっと足の遠のいている)旧来のファンを集める程度では全然足りず、これまでそこにそんな作品があるなんて知らなかった、という層をとりこむ、そんなエポックメイキングな作品が必要だったと思うのです。社会的にブームのような形で関連地名が聖地化して観光客が押し寄せてくる、というラーメンが本当は求められていたはずです。
『君の名は。』もそう。本来がアニメ映画ですから集客能力はそれほど高くないはず。しかもオリジナル作品。新海監督のこれまでの作品をしらない人たちなんてざらにいる。ポスト宮崎駿といわれても、一般の映画ファンや、そもそも映画なんてめったに見に行かないよ、という層からしたらまったく知名度はないも同然です。なのに来た。来て、見て、面白いと広めて、あれほどのモンスターヒットになった。
『シン・ゴジラ』も『君の名は。』、そうやって想定される顧客以上の層まで集客することができて、高評価を得ることができたのがこの奇跡のような大成功、として興行収入につながってくるのです。
モノづくりにおいて共通する大事な要素
今回のラーメンでいえば、そうした興味ない層を振り向かせるだけの魅力に欠けてるように見えました。というより、招致した町の関係者も番組関係者も、おそらくシェフでさえも、「美味しいラーメン」を作ることを目的に据えてしまっていたんではないでしょうか。東京や、日本中からこのラーメン目当てに観光客に来てもらうんだ、という気概はまったく感じられませんでした。
いいものを作って、結果としてそれが根付いて、やがて伝統という武器を得て「普段の客層の」外からの集客を集められるというルートはありますが、それには時間がかかります。しかしそのやり方は、さびれつつある地元商店街を救う、町おこしという目的からはずれている方法論だと思わざるを得ません。
今回は町おこしが最終的な目的であったはずです。そこを見落としてモノづくりをしても、一見良いものができても最終目的は果たせないものになってしまうでしょう。
それは映画でいえば「普通に面白い」という作品です。特に誰かに語気強く勧めてみたくなるとか、依然とバイラルで次の客を呼んでくるとかの作品にはなりません。
そうではなく、本当に面白いものを、本当においしいものを、そしてすべての人に新鮮な感動を与えるようなものを作らないといけない、と映画とラーメンの意外な共通点を見つけた思いでした。
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