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おっさん、映画を見る

広告業界で働くITエンジニアなおっさんが、映画について語っていくブログ(ネタバレもあり)

いい映画だった!ミステリ好きにはぜひ観てほしい!けど、「『少女』のパンフレットください」って相当やばい響きだよね!? 湊かなえ原作映画『少女』レビュー

こんにちは、おっさんです。

忙しくてなかなか映画を見に行けないと言いつつ、色々フラストレーションが溜まってきたのですべてを放り投げてみてきました、湊かなえ原作映画『少女』!

http://www.shoujo.jp/sp/img/top/v2.jpg

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わざわざ湊かなえ原作とか映画とかつけないといかがわしすぎるタイトル問題。タイトルにも書きましたけど、パンフレットとか買うときなんて人○売○じゃねーんだから、って小咄ができそうです。

ともあれ、湊かなえ原作映画『少女』レビューしてみましょう。

原作『少女』について

まずはこれについて語らないといけないでしょう。

原作『少女』は 2009年1月20日の湊かなえさんの小説。

高校2年の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から親友の自殺について話を聞いて以来、「自分も人の死を目の当たりにしたい」と思うようになる。由紀は病院へボランティアに行き重病の少年の死を、敦子は老人ホームで手伝いをし入居者の死を目撃しようとする。

少女 (湊かなえ) - Wikipedia

wikipediaのあらすじ記載はとても薄いのですが、内容は多くの登場人物の行動、心情が複雑に絡まる密度の非常に濃い小説です。由紀と敦子という主人公2人の「死」への傾倒と心情のすれ違い、紫織というある意味で裏の主人公とも言える少女の抱えた闇と秘密。印象的な冒頭とそれにつながるラスト。一見バラバラなパズルのピースが、一欠片の真相が見えると同時に一気に組み合わさっていくカタルシスはこの作者独特の読後感をもたらします。

読後に嫌な気持ちになるミステリー、通称イヤミスの代表格とも言われる作者ですが、デビュー作であり代表作でもある『告白』ほどではないものの、本作でもドロドロした人間の暗い部分を見通す目線が存分に発揮されていますね。人間誰しもがもつ、ほんの少しの悪意が複雑に絡み合うと、大きな事件を起こす歯車になる。そしてそれはやがて自分にも大きな影響をもたらす、という意味で、作中に用いられる「因果応報」をよく表現した傑作です。

映画『少女』について

さて、そんな原作小説の映画化が本作となります。

<由紀の闇> 読書好きで休み次巻はひとり静かに本を読み、授業中は小説を書いている由紀。クラスの女子が親友の敦子を集団でいじめていても助けることはできずにいた……。ある日、いじめがエスカレートして倒れた敦子は、保健室のベッドの中で「死にたい」と訴えかける。そんな“闇”を抱える彼女に由紀は「暗闇の中を一人ぼっちで綱渡りしている、そんな気持ちなのかもしれないけど、そんなことないから」と優しく手を差し伸べる。そしてその夜、書きかけの小説を完成させる。しかし、その翌日に原稿が何者かに盗まれてしまったことで、由紀はある危険な行動にでてしまう──。

 

<敦子の闇> 幼い頃から剣道を習い将来有望と期待されていた敦子。ところが、高校の団体戦でミスをしたことを機にいじめの対象に。その時ケガした足はすでに完治しているものの学校では足を引きずったふりを続けている。敦子にとって唯一の友だちは由紀だと思っていたが、ある時から2人の関係がぎくしゃくしているように感じ、距離を置くようになる。けれど由紀のことが気になり、何が彼女を変えてしまったのかそっと見守る。そして、由紀の“闇”を目撃する。そんなとき、紫織という生徒が転校してくる。彼女に誘われ、敦子はあることを断り切れずに共犯者になり──。

映画『少女』公式サイト

この映画は唐突に、「遺書」と題された演劇じみたシーンから始まる。それが何を意味するのか、一切の説明がないままに場面は転換。ミッション系の女子高の日常へと移る。

本作の主人公2人はそれぞれに“闇”を抱えたまま、その女子高に通う高校生。由紀は家族の事情とそこからくるトラウマをもっている。敦子は部活のミスを引きずって足の怪我を偽装しており、またその件がきっかけでキツイいじめの標的となっている。

そうした鬱屈した生活を過ごす中、由紀はある小説を書き続けていた。イジメがエスカレートし敦子がパニック障害で倒れた後、彼女は由紀に 「死にたい」と訴えかけるが、由紀は「そんなことないから」と優しく手を差し伸べ、そして小説を完成させる。

しかしその小説は、あろうことか彼女たちの教師である小倉に盗まれ、さらには文芸誌に発表されてしまう。あまつさえ授業でその冒頭を配布する小倉。「この主人公は君たちの誰でもある」という言葉は、あとから考えれば呪い。心に染み入る毒。敦子はその小説は由紀の手によるものだ、と感じていたのだが、その冒頭を読んだとき自らの境遇を揶揄したものだと誤解してしまう。

一方の由紀は盗作の復讐として、小倉のパソコンから個人情報を流出させる。小倉は停職。やがては自殺をしてしまう。またこの時、由紀は小倉のパソコンの中から、彼が別の高校の女子高生と淫行している動画を発見していた。

さらには転校生、紫織がやってきて「親友の死体を見たことがある」と告白し、さらに敦子をある“犯罪”へと誘い共犯者としてしまう。この一連の事件を機に微妙にすれ違いだすふたり。

夏休み。昨年は毎日メッセージのやり取りをしていたはずの“親友”ふたりは全く連絡を取らず、学校の課外学習として別々のボランティアに従事していた。それぞれの新しい出会いと生活が、ある時、ふとしたきっかけで再び一か所に交わることに。

強烈に「死」を意識させるある事件。

祖母に虐待に近い扱いを受けていた幼少を思い出し、トラウマを刺激されパニックを起こす由紀。敦子はそんな彼女を足のケガの偽装も忘れて出会ったころのように彼女の手をつかんで走り出す。そして二人は、自分たちの「生」のすばらしさを再認識するのだ。

だがその裏で、(意図していないとはいえ)ふたりの関係に瑕をつけた紫織には悲劇が起きていた。由紀が関係したある事件、敦子が関係したある人物、小倉とその彼女。彼女自身の父親。そして冒頭の「遺書」。この物語のすべてのピースが彼女の身に収束して……

密接に絡まる事件、張り巡らされた伏線。見方次第でまったく別の印象になる面白い映画

原作ファンからすると、いささかキャラクターの性格が映画にあわせてメリハリがついたものになっていて、またいくつかの出来事がカットされているのがわかる。それが不満だと思う人も多いと思うし、その感想は多分ただしい。

ただ、この映画だけを見てみれば。

一見すべてが無関係に思える様々なことが羅列された本作。ラストシーンを理解するまで、ただただ淡々とひねくれた女子高生たちの日常(というにはいささか事件が起きすぎるが)が描かれているだけで、見ていると退屈に思えるかもしれない。だって何が起きているのかわからないんだもの。

ただそれがすべて伏線だった、と気づいた時の気持ちよさがこの映画のすばらしさ。そういう意味で、本作は湊かなえの作家性をきちんと描き切っていると思う。

さらに、この作品のテーマは「因果応報」なのだ。誰が引き金を引いたわけではなく、まるで綱引きのように登場人物のすべてが「事件」について少しづつ責任を背負っている。

それでいて二人の少女の青春ストーリーでもあるからおもしろい。青春映画であり、少女の悲劇であり、ミステリでもある。どこでストーリーを区切るかでこれほど印象が変わる映画もなかなかないよなぁ。

無表情な本田翼と妙にエロい山本美月。本作のキャストについて

本作のダブル主人公のひとり由紀を演じたのは本田翼。2006年にファッション雑誌『SEVENTEEN』の専属モデルとしてデビュー。その後『non-no』の専属モデルとなり、現在に至る。『恋愛ニート〜忘れた恋のはじめ方』でテレビドラマ初レギュラー、『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』で共演した木村拓哉とはメル友というのが地味にすごい。映画では多数の現役モデルで撮影した『FASHION STORY -Model-』をはじめ、主演として『アオハライド』『起終点駅 ターミナル』など。笑顔の多い、目の印象が強い彼女ですが、本作で見せた鬱屈した演技って何気に新境地だと思う。見ててゾクっとしたもん。

もう一人の主人公敦子を演じたのは山本美月。「東京スーパーモデルコンテスト」初代優勝者としてデビュー。テレビドラマ『幸せになろうよ』から女優デビューして、『桐島、部活やめるってよ』から映画に進出。直近では『貞子vs伽椰子』。これ笑ったなぁ。玉城ティナが泣き叫ぶ中、恐ろしいほどの冷静さで、伽椰子の家に入るまでほとんどパニックになってなかった彼女が、本作ではパニック障害気味なのも面白い。しかし「美人さん」ですよねぇ、ほんと。写真より動いているほうがキレイに見えるというのも彼女の特徴かもしれません。あ、物語の終盤、彼女がタンクトップで走るシーンはやたらとエロいです。

モデル出身の主人公を向こうに回して裏ヒロイン紫織を演じたのは佐藤玲日本大学芸術学部演劇学科演技コース卒業、蜷川幸雄演出舞台『日の浦姫物語』娘役に抜擢されデビューという演劇畑出身の彼女。モデルズに負けないくらいかわいい女子高生になっていたのはさすが。そういえば出演作『イニシエーション・ラブ』も“衝撃のラスト”という触れ込みのわりに拍子抜けだった記憶が。あれは絶対本のほうが良いし、今作のほうが衝撃度合が全く上だ。

そのほか真剣佑にSMAP稲垣吾郎とそうそうたるメンツがいい演技をしているんだけど、なによりも教師小倉役のアンジャッシュ児嶋! 彼が本当に素晴らしかった。あの下種具合はなかなか出せるものではないぞ。

最後に重要な話をしよう


「少女」予告編

PV詐欺に近いだろ、これ! なんだよ、最後の屋上で手を放すシーンは!

面白かった。面白かったんだけどね。

なんでこんな予告編にしたんだろうなぁ……